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金長狸

「阿波の狸合戦」でおなじみ、今は商売繁盛の神様「金長大明神」としてまつられる金長狸とは。

金長狸について

金長大明神のイラスト四国地方は往古より狸伝承がさかんで、阿波徳島でも市井や社寺のご神木のウロなどに狸の祠が多数祀られています。中でも特に有名なのが、講談「阿波の狸合戦」の主人公である狸・金長を主祭神としてまつった小松島市中田にある金長神社(阿波八百八狸総本家 正一位金長大明神)です。
天保年間、小松島日開野で大和屋という染物屋を営む茂右衛門に助けられた金長狸は恩返しに染物屋を大繁盛させます。一方、勝浦川を挟んだ津田の六右衛門狸は弟子である金長を気に入っており、手元に置きたいと考え婿養子にしようとするのですが、茂右衛門への義理のあった金長はそれを断ります。不服とした六右衛門は夜襲をしかけ、金長の仲間の藤ノ木寺ノ鷹狸が殺されてしまいます。金長は鷹の仇討ちのため、同志達とともに六右衛門軍と戦い、打ち負かします。しかし金長も致命傷を負い、瀕死で日開野にもどり茂右衛門に礼を述べて命尽きます。茂右衛門は哀れみ、京都の吉田神祇管領所より正一位を授かって金長を大明神として祀ります。大和屋の店員に金長の霊が憑き、死後も永遠に茂右衛門の家の神として報恩することを誓ったとされます。
明治時代後期に書かれた、獣らしからぬ義理人情にあふれたこの講談は、日清戦争の世相と相まって好評を博し、数度に渡る実写映画化もされました。茂右衛門は実在の人物で、講談本は直系の子孫の家の口承をもとに制作され、実際に金長が茂右衛門家の神として代々祀られてきたようです。現在は商売繁盛、開運の金長大明神として徳島県下で知られ、毎年5月の定例の祭りでは狸神輿が練り歩きます。

金長大明神

金長の死後、染物屋の茂右衛門がその魂を金長大明神として弔い祀ったのが金長信仰の始まりです。昭和14年新興キネマが作製した映画「阿波狸合戦」のヒットの御礼として、日峰神社境内社として金長神社本宮が建立され、昭和31年に里宮として茂右衛門家の屋敷神の金長のご分霊が現在地に勧請されました。境内や拝殿内には狸の石像や人形が奉納され、拝殿正面横には武将姿の凛々しい金長大明神の姿絵が掲げられています。

小松島の金長だぬきのイラスト

阿波のシンボル・小松島の金長

徳島県下では、菓子「金長まんじゅう」を初め、様々な媒体で金長狸がモチーフとして親しまれています。特に小松島市では、町おこしのキャラクターとしてラッピング広告やオブジェなどに多用されています。毎年秋に行われる阿波の狸まつりでは、金長大明神を含めた狸のほこらを巡るラリーが開催され、子供たちでにぎわいます。スタジオジブリ「平成狸合戦ぽんぽこ」をはじめ、近年でもコミック漫画やアニメの題材として扱われ、再び全国の若者層から注目が集まっています。そんな中、金長神社の社殿のある市営グラウンドが都市公園へと再整備されるのに伴い神社の取り壊しが決定、2018年6月現在神社の消滅の危機に瀕しています。郷土の貴重な文化遺産、観光資源として、なんとか移築か再建の方向で進んでほしいものです。

阿波の国と狸の関係

徳島には多くの狸の祠が有りますが、これらには動物の狸以外の神霊を祀ったものが後世狸信仰に付会された例も多々含まれると考えられます。人同士の交流や派閥争い、宗教家や職能民の奇特な技能などが、狸に仮託されて憑依や合戦などの民話に変化していったと言う説もあります。八十八ヶ所巡礼者や修験者・木地師・鉱山師など、四国は多くの非定住民が常に流入していた地であり、そういった人々の痕跡霊跡や民間信仰が阿波においては狸信仰に修練されていったのかもしれません。現在も狸はプロサッカーチーム徳島ヴォルティスのキャラクターに採用されるなど、阿波のご当地シンボルとして、特別な存在であります。

楠の根元の狸のほこらのイラスト
参考資料
金長神社 - Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/金長神社
阿波狸合戦 - Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/阿波狸合戦
金長大明神小松島復興大作戦ぽんぽこ:https://ameblo.jp/kincho-strategy/theme-10105087564.html
ぐーたら気延日記(重箱の隅):ぐーたら氏/http://goutara.blogspot.com/2014/05/blog-post_31.html
awa-otoko's blog :awa otoko氏/http://awa-otoko.hatenablog.com/entry/2015/01/23/002648

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